HOME > お知らせ > ゴルターマン博士が、東京福祉専門学校へ来校!
ゴルターマン博士が、東京福祉専門学校へ来校!
2010年6月27日
「福祉英語検定試験に対する期待」として、当協会会長の近藤雅臣氏(大阪大学名誉教授)、グレン・ゴルターマン博士(州立ウエストフロリダ大学ソーシャルワーク学部)より推薦の言葉を頂いて実施が始まった福祉英語検定試験も、この7月で18回を迎えることとなりました。これもひとえに、福祉従事者の皆さまのご理解があってこそのことと感謝申し上げます。
さて、去る6月27日、福祉英語検定試験の推薦人の一人、グレン・ゴルターマン博士がアメリカより来日されました。博士は社会学士、ソーシャルワーク修士、及び教育行政学博士を取得されており、本年度、ウエストフロリダの最優秀ソーシャルワーカーに選出されました。
そこで当協会では、権威者である博士に、今や世界的な問題である「高齢化社会の到来」について、アメリカでの要介護者への対応、保障制度についてお話を伺いました。
(1) 介護の問題に直面した時、アメリカではどのようなケアをしますか。

要介護者へのケアの方法として、施設利用、福祉職や家族による在宅介護が挙げられるが、アメリカでは施設利用を選択するよりも、在宅での介護が選択される割合が多い。
その際、子ども家族との同居の上での介護ではなく、あくまでも自分が暮らしている自宅での介護を望む。アメリカ社会の中に、同居という慣習は根付いていない。
またアメリカの家族関係の中で、多くの親は実は子どもに介護されることを望んでおらず、また逆に、子どもは親の介護をすることが当然という価値観にも縛られていない。
しかし、介護が必要となったとき、家族の中で介護を請け負うのは、妻でも嫁でもなく、「娘」であることがほとんどである。(但し、男性が介護休暇を会社に申請することは、周囲に広く認められている。)
在宅介護が選択される割合が多いため、日本のように施設の「入所待ち」が社会問題として取り上げられることもない。入所待ちが問題となるのは、一般的に大都市に所在する施設に関してのみで、地方都市においては、利用の申込みをすれば、入所の許可は比較的すぐにおりる。
余談だが、幸いにも身体、精神状態が良好で、経済的にも恵まれている高齢者の中には、自宅を離れ、「高齢者施設」ではなく、長期ケア的な支援サービスが受けられる「ラグジュアリーホテル」の様な施設を今後の生活場所とする人々もいる。「格差」が見え隠れする一面とも言える。
(2)アメリカの保障制度というと、Medicare, Medicaidが挙げられますが、自国の制度についてどのように考えられますか。

高齢者向け医療保険制度であるMedicareについては、保障範囲は適切であると考えられるが、低所得者向け医療扶助制度であるMedicaidについては問題がある。というのも、Medicaid受給者は十分な医療を受けられない現実があるからである。医師がMedicaid受給者の治療を「医療費が支払えない」との理由で拒否をする。すると、治療が受けられないMedicaid患者の様態は悪化する。Medicaid患者にとって医療を受ける唯一の手段は、救急救命医療しかない。
なぜなら、救急救命医療については、どの医師も拒むことができないからである。
しかし、救急救命医療にかかる費用は高額なため、Medicaid受給者は支払うことができない。
結局、治療が受けられず、症状が悪化するという悪循環が生じる。
オバマ政権下で医療保険制度改革法が成立した。アメリカ史上初の国民皆保険制度の導入となる。
施行は2年後だが、新法に寄せる期待もある。
(3)最後に、日本の施策やシステムでアメリカに導入されたら良いと思うものはありますか。

アメリカで国家や地域の保障・支援が届かない人々の救済を可能にしているのは、各種ボランティアである。アメリカのある程度の福祉政策の成功は、ボランティアの確立が根底にあるといえる。それなので、語弊があるが、ボランティアの慣習が確立していなくても国民が等しく保障が受けられる各種の日本の施策や制度は(例えば、国民皆保険制度など)指標になりうる。
また、高齢者を対象として展開されているシルバーカレッジもアメリカに導入されたら良いと思うものの一つである。プログラムの充実ぶりには目を見張るものがあり、学習意欲や探究意欲が喚起されることで、生活に張りが生まれると考えられるからである。
在宅介護を選択する割合が多いアメリカにおいて、家族関係、家族のあり方は重要な要素である。日本で長男に嫁いだ場合、その両親と同居をする家族形態がある。この家族形態には賛否両論あるが、長い目で見ると、両親、夫婦、子どもがお互いに助け合える形態と考えられるので、アメリカにおいてこのような家族形態があっても良いのではないかと思う。
以上、ゴルターマン博士からのお話でした。
アメリカの福祉政策のある程度の成功を「ボランティア慣習の確立に支えられている」と分析する博士の見解は大変奥深いものでした。
医療・福祉英語検定協会では今後、定期的に国内外の医療や福祉に関する内容のインタビューやコラムの掲載をしていきます。掲載を希望するテーマがございましたら、お問い合わせフォームにて、是非ご連絡下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。